報告


港ごとに女有り。

 

という言葉がよく似合う人だった。

 

 

 

2,3日停泊を決めた港町で、ナミはルフィを荷物持ちにショッピングに勤しんでいた。

「本当に本当に肉食わせてくれるんだろうな」
「本当よ」
しつこく確認するルフィに、ナミは軽く返事をする。
ナミの鞄には“1時間食べ放題”と書かれた飲食店のチラシが入っている。
そのチラシを持って決められた料金を払えば、店で何を食べるのも自由だ。
ルフィがどれほど食べるかという一抹の不安があるが、長い間滞在する予定のない町。
店がつぶれても大丈夫だと無責任なことをナミは考えている。

 

「お、あれサンジじゃないかー」
町のメインストリートに差し掛かったとき、ルフィが脳天気な声をあげる。
「おーー、フガッ」
大きく手を振り呼びかけようとしたルフィを、ナミは手で口を塞いで止めた。
「やめなさいよ」
「・・・何でだ?」
ナミの手をどかしながらルフィは首を傾げる。
「連れがいるでしょ。よく見なさいよ」

ナミの言葉通り、サンジは髪の長い綺麗な女性と歩いていた。
ルフィの腕を引いて、ナミは彼らから離れようと反対の道を行こうとする。
「あー、本当だな」
「ああいうときは邪魔しないのよ」
「でも、もう遅いみたいだぞ」
ナミに引きずられながらもサンジの姿を目で追いかけていたルフィは、指を差して言う。

その言葉に、ナミは眉をひそめながら振り返る。
確かにサンジは二人に気付いていた。
満面な笑顔でナミ達に向かって手を振っている。
その傍らでは、ナミに強い視線を向けてくる女性の姿。
「・・・・馬鹿」
吐き捨てるようにして言うと、ナミは振り返ることなくルフィと共に街路に消えた。

 

「・・・肉、食いに行くか?」
沈黙のあと、ルフィは唐突に問い掛ける。
「何よ、突然」
「いや、何か、ほら・・・」
ルフィは珍しく言いよどんだが、覚悟を決めたのか、ナミを振り返ってはっきりと言った。
「ナミが泣きそうな顔してるから」
「・・・・」
にぶいルフィに気付かれるほどあからさまに顔に出ていたのだろうか。
ナミはごしごしと手の甲で強く目元をこする。
「・・・あんたの気のせいよ」
「そっか」
ナミの答えに、ルフィはいつもように明るく笑った。
本当は、分かっていたかもしれない。
だけれど、それ以上追求しようとしないルフィの心遣いを、ナミは心から感謝した。

 

 

「7、8、・・・9人目かなぁ」

宿のロビーで、備え付けの椅子に座りながらナミは指折り数える。
他の港町を含め、今までにサンジが逢っていた女性の数だ。
ちらりと見かけただけで、この数。
本当はもっとずっと多いだろう。
「誰にでも同じような笑顔向けちゃって」
そして、同じように「好き」と言っているのだろう。
あまりに鮮明に想像ができて、ナミは深々とため息をついた。

「誰の話ですか」

すぐ背後で聞こえたその声に、ナミは驚いて振り返る。
いつからいたのか、ナミの腰掛ける椅子の後ろにサンジが佇んでいた。
「・・・もう帰ってこないかと思ったわ」
ナミは壁に掛けてある時計を見ながら言う。

時刻は深夜1時を過ぎたところ。

「何言ってるんですか。俺が帰るところはいつだってナミさんのところですよ」
サンジはにこにこと弾けるような笑顔を見せる。
白々しい言葉と笑顔に、ナミは一気に表情を曇らせた。
「私のところじゃなくて、みんなのところでしょ。仲間なんだから」
乱暴に言うと、サンジは首を傾げて不思議そうな顔をする。
「ナミさんがいるから、みんなのところなんですよ」
「・・・・・」

サンジを一睨みすると、ナミは無言のまま二階の客室への階段を上りだした。
その背中に怒りの感情を察し、サンジは追いかけることなくその後ろ姿を見詰める。
「あれ、俺のこと待っててくれたんじゃないのかなぁ・・・」
サンジはがしがしと頭をかきながら呟いた。

 

 

 

船が出航する日、ナミが宿で最後の荷物点検をしていると、ひょっこりと現れた人物がいた。
数日前、ナミとルフィがサンジといるところを目撃した女性だ。
大人の女性の雰囲気を持った、妖艶な美女。
たぶん、年齢はサンジよりもだいぶ上だろう。

「あなたが、ナミさんでしょ」
朗らかに笑う女性に、ナミは緊張して姿勢を正す。
「あの、サンジくんなら船の方に・・・」
「ううん。あなたに会いたかったのよ」
彼女は楽しそうに笑って言った。
「あのね、分かってると思うけどサンジが女の子に声をかけるのは挨拶みたいなものだから、いちいち気にしちゃ駄目よ。昔からのことだから、癖になっちゃってるのよ」
「・・・・何の話ですか」
わざわざ昔からの付き合いだということを言いに来たのだろうか。
ナミはこめかみの血管が切れそうになりながら努めて冷静な声を出す。

「何って、サンジの恋人のあなたにいろいろとアドバイスをしようと思って」
「・・・・は!?」
「あれ、違うの。サンジはそう言ってたけど」
「き、き、聞いてません!そんなの!!」
激しく首を横に振るナミに、彼女はくすりと笑う。
「あれ、じゃあ片思いなんだ。あの子ね、上陸した港で今まで付き合ってた女の子達全員に言って回ってるらしいのよ。好きな子が出来たから、もう逢えないって」
彼女は面白そうに笑って続ける。
「ナミさんっていう名前で、凄く素敵な女性なんだって」

ナミは顔を赤くしたまま絶句してしまった。
港港でサンジが女性達と頻繁に逢っていたのは、その報告をするためだったのか。
それにしても、人数が多いような気がする。
目の前の女性の存在を忘れて考え込むナミに、彼女は笑いながら言った。
「頑張ってね」
強く肩を叩かれ少しふらついたナミは、力無く笑った。


あとがき??
ナミサン。サンナミよりも好きかもしれない・・・。(読むのはサンナミだけど)
サンジさん、レストランにいたのにいつのまにあんなに彼女を。元客?
ルフィがいい奴。しかし、私が書くとルフィもナルトもハリーも同じキャラになる。(純真無垢。でも裏の顔有り)
女の子も同じだわ。ああー。私がナミを書くと可愛い系になってしまう。(泣)
次はルナミを書きたいですわ。


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