できちゃった


トイレから出てきた神楽は、真剣な表情で蹲っていた。
すでに
15分ほど時間が経過していたが、動く気配はない。
「どーしたー?腹でも壊したのか」
「・・・出来ちゃったアル」
「ああー?出来たって、何が」
「赤ちゃん」

その瞬間、銀時の読んでいたジャンプが縦に破れる。
暫く硬直したあと、銀時はゆっくりと神楽の方へと顔を向けた。
「アホな冗談言ってんじゃねーよ。本気でびびっただろ」
そのまま神楽の手元を見た銀時は、体中の血液が一気に冷え切ったのを感じる。
神楽が持っているのは薬局で購入できる妊娠検査薬。
しかも、それは陽性を示す色に変っていた。

「どーしよう、銀ちゃん」
神楽は困っているというより、素朴に疑問をぶつけているようだ。
大きな驚きが去ったあと、銀時の胸中に渦巻いたのは怒りの感情だった。
彼は神楽には手を出していない。
ということは、神楽に対抗できる力を持っている男などこの界隈で一人しかいなかった。

 

 

 

「寝込みを襲うたー、卑怯じゃねーですかい?」
「うっせー」
刀を構える沖田に木刀を突きつけ、銀時は珍しく怒りをあらわにしている。
駄菓子屋の前のベンチで無防備に昼寝をしていた沖田だが、通りを走ってやってきた銀時の攻撃をかろうじてかわしたのは、さすがに真選組の幹部といったところだ。
おかげで、彼の寝ていたベンチは彼の体の代わりに破壊されていた。
「弁償、しないといけねーや」
「椅子より、神楽だろ!てめー、責任とってうちの神楽を嫁にもらう気はあるのか」
「・・・・・・はァ!!?」
寝耳に水の結婚話に、沖田は大きく目を見開いた。

「何の話でさァ。チャイナがどうかしやしたか?」
「しらばっくれるな!てめー以外、誰が神楽の腹の子の父親だっていうんだよ。あいつに手を出そうなんて度胸のある奴は他にいない」
「子供・・・・チャイナが?」
唖然とした表情のまま、沖田はかすれ声で呟く。
感情をあまり表にださない彼にしては、ショックを受けているのだということがよく分かる。
そこまできて、銀時は初めて沖田が本当に何も知らないのではないかと思い始めた。
何しろ彼は無防備で、今ならば簡単に叩きのめすことも出来そうだ。

「お前、本当に神楽には・・・・」
「まだ、何もしていやせんぜ」
彼がひどく傷ついているように見えて、銀時はそれ以上追及するのをやめた。
それならば、相手は一体・・・・・。

 

 

 

「どうしよう、どうしよう、どうしようーー!!」
「観念しろヨ、眼鏡」
頭を抱えて跪く新八の背中に、神楽は体重ごとのしかかっている。
彼には怖いものが沢山あった。
まず、地球最強と思われる彼の姉の存在だ。
まだ14の神楽を孕ませたと分かれば、叩きのめされるだけではすまされないことだろう。
次に、神楽の父親、彼は宇宙最強のえいりあんばすたー。
確実に殺される。

「パピーは出来ちゃった結婚だし、孫の顔を見れば許してくれるアルヨ。姉御だって、道場の跡取りは強い子供の方がいいはずネ。私の子供なら最強、決定ヨ」
「・・・・・」
年下の神楽に慰められ、新八は急に自分が情けなくなった。
本来ならば、不安なのは神楽の方だ。
話を聞いてからは動揺してばかりで、彼女に一言も優しい言葉をかけていなかった気がする。

「・・・ごめん」
他に何と言っていいか分からず、小声で漏らすと神楽はにっこり微笑んでみせた。
乱暴で毒舌だが、可愛いところもあるのだ。
新八にとって、妙や通とは違った意味で、大事な少女であることに違いなかった。
「幸せにしてやるヨ。婿に来るヨロシ」
胸を張った神楽の男らしいプロポーズに、新八は思わず破顔する。
少々度を越すかもしれないが、神楽が伴侶ならば賑やかな家族になることは確実だった。
「よろしくお願いします」


あとがき??
新神好きなんですよ。マイナー、マイナー。
どちらかというと、神楽→新八なんです。


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