本当の敵・・・


「どんな感じって・・・・銀さんと神楽ちゃんのことですよね」
「そう」
買い物袋を両手に抱えた新八は、眼前に立ちはだかった沖田を困惑して見つめる。
「二人はいつもああですよ。家の中でも、神楽ちゃんが銀さんにまとわりついて、銀さんは好きなようにさせています」
何故、彼が銀時と神楽のことを気にするのかは分からないが、早く帰りたい新八は正直に答える。
道端で制服姿の沖田に詰問される新八は、警察に補導された少年の心境だ。
近所の人間が見たらどう思われるか、気が気ではない。

「普段は家から通っているから、僕は夕方で帰るんですけど」
何気なく言うと、沖田の目が鋭く光った気がした。
「じゃあ、夜は二人きりかい?」
「ええ」
沖田は顎に手を当てて考え込んだが、新八は不思議そうに首を傾げる。
彼の中では沖田と神楽は犬猿の中ということになっているのだから、当然だ。

「あの、今度うちに遊びに来たらどうですか?僕の話を聞くより、目で見た方が早いと思いますよ」
にっこりと笑った新八は何の思惑もなく沖田を誘う。
万事屋の内部を知りたいのだったら、見られて困る物もないのだからとくに問題はない。
神楽が騒いだとしても、壊れた物の代金は真選組に請求すればいいことだった。

 

 

 

「誰もいねーのかい?」
新八に言われたとおり、沖田が万事屋を訪れると中から人が出てこなかった。
しかし、ドアに触れると鍵はかかっていない。
不審に思った沖田がドアを開くと、万事屋の住人は確かにそこにいた。
ただ、身動きが出来ず、大きな声も出せない状況だっただけだ。

「あ、すみません。出ていけなくて」
小声の新八が申し訳なさそうに言うと、沖田は驚いた顔のまま硬直している。
神楽が、新八の膝を枕にしてぐっすり眠っていた。
さらに、安心しきった顔の彼女は新八の手をしっかりと握っている。
「・・・旦那は?」
「銀さんはふらふらしていてあまり家にいないんですよ。今日はパチンコです」
近づいて訊ねる沖田に、新八は笑顔で答える。
「じゃあ、いつもは二人で・・・」
「定春もいますけどね。ああ、神楽ちゃん、寝顔は可愛いでしょう」
沖田の視線が神楽に向かっていることに気付くと、新八は空いている方の手で彼女の髪に触れた。
「結構、甘えん坊なんですよ。料理をしていてもTVを見ていてもくっついてきて、この髪も僕が毎日お団子にしてるんです。今は枕代わりですけど」

 

明るく笑う新八を見ながら、沖田は悟る。
今までは、神楽が何かと頼っている銀時がライバルだと思っていた。
だが、神楽が無意識に懐いている彼こそ、本当の驚異かもしれない。
あまりに影が薄いため意識していなかったが、神楽の傍らには彼がいることが多かった気がする。
「あれ、どうしたんですか?怖い顔して」
にこにこ顔の新八は沖田に敵として認識されたことなど知るはずもなかった。


あとがき??
うーん。沖→神→新。
ポクロさんに頂いた新神イラストが可愛かったので、こんなSSを書いていました。
有難うございました!
妙なSSですが、同じ新神好きーとしてポクロさんに捧げさせて頂きます。


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