florist 2


「好きです!!」

公衆の面前で、いきなり花束を突きつけられた。
寮に向かう途中だっただけに、行き交う生徒達は好奇の目をフラン達に向けている。
頭を下げて返事を待つフランに、リリーは困ったように笑った。

「あの、フラン。気持ちは嬉しいけれど・・・・」
「本当ですか!」
話の途中で、顔をあげたフランは腕に抱える花束ごとリリーの手を握る。
輝く瞳で見つめられ、リリーはどうにも言葉を続けられなくなった。
代わりに、殺気に近い怒気を放っているのは、リリーのすぐ傍らにいるジェームズだ。

 

「・・・・君、ちょっといいかな」
「何ですか」
あからさまに不機嫌な声を出すジェームズに、フランは今、彼の存在に気付いたかのように首を傾げる。
「リリーはもう僕と交際しているんだけれども」
「知ってます。でも、結婚しているわけじゃないでしょ。リリーさんの気が変わることだって、十分ありますよね」
ジェームズの刺すような視線を意に介さず、フランは冷静な口調で言った。

面白がって見ていたギャラリーからは、すでに笑いの声が消えている。
表面は笑顔で余裕を表現しているのだろうが、ジェームズの発する空気がとてつもなく重かった。
ぎすぎすした雰囲気の中、もはや彼らにこの状況を茶化す勇気はない。

「あのね、フラン、このお花は有り難く受け取るから、今日のところは・・・」
「はい!僕、毎日花を持ってきます。リリーさんの好きな花を」
満面の笑みを浮かべるフランには、リリーの顔が多少引きつっていようとも、あまり関係のないことだった。

 

 

「あのさー、ジェームズさんといえば、成績優秀で人望厚くてクィディッチの優秀な選手。リリーさんと二人でグリフィンドールのベストカップル賞に選ばれてるくらいなんだから、あんたに勝ち目はないわよ」
「あー、うるさい、うるさい」
幼なじみのリンデルの言葉を、フランは耳で栓をして聞こえないようにする。
リリーへの告白を見ていたらしい彼女は、廊下を歩いているフランの後ろを付いて回っていた。

ジェームズとリリーのことは言われずとも、分かっていることだ。
だけれど、一目会ったその日から、フランはずっとリリーに夢中だった。
彼女を見たときの電流が走ったような感覚は忘れようとしても忘れられない。
リリーこそ自分の運命の人だと、フランは信じて疑わなかった。

「リリーさん、綺麗なだけじゃなくて凄く優しいんだ。図書室に案内してくれたあの日以降も、いろいろ相談にのってくれて」
「何回も聞いたわよ。でも、それはあんたが彼女を追いかけて図書室に通い詰めてたからでしょ。本当は迷惑だったのかもしれないわ」
「そんなはずない!」
フランは頬を膨らませながら否定する。
面白くない気持ちで俯いたフランは、それからリンデルが何を言っても無言の返事をするだけだった。

 

 

「だから、ここにサインするだけだってば」
「もー、いい加減にしてちょうだい!」

しつこく言い寄るジェームズに、リリーは立腹した様子で顔を背ける。
だけれど、そんなことにへこたれるジェームズではなかった。
無理にリリーにペンを握らせようとして、ジェームズは再び怒鳴られている。

「何事だ?」
「それが、リリーに言い寄る無謀な新入生が登場したせいで、ジェームズくんは焦っているみたいよ」
「ジェームズがサインするよう言ってるあの紙切れはなんだ」
「婚姻届」
「・・・・・」
リーマスの淡々として答えに、シリウスは絶句する。

「・・・・まだ、未成年だぞ」
「新入生に旦那でもないのにえらそうなこと言うなって言われたらしいよ」
多少脚色されているが、リーマスは嘘は言っていない。
「約束が欲しいのかもしれないけど、あの勢いじゃそのまま役所に提出しに行きそうだよね」
押し問答をしているジェームズとリリーを傍観しながら、リーマスは楽しそうに笑って言った。


あとがき?
シリウスと入力したら尻渦と出てきた。シリウズと入力していたらしい。何か、嫌。
嫉妬に狂うジェームズって簡単に書けちゃう。
嫉妬するハリーってのは、非常に書きにくいのですが。
同じ顔なのにね。
リンデルちゃんの名前もやっぱりカルバニア。


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