LOVE SICK


「ハリー、ロンを見なかった?」
「知らないよ」
「・・・そう」
ハーマイオニーはあからさまにがっかりとした表情で肩を落とす。

「さっきから談話室で待っているのに、全然姿を見せないのよ。どこに消えたのかしら」
「どうかしたの?」
首を傾げるハリーに、ハーマイオニーは僅かに顔をしかめる。
「・・・・別に、ただ昨日のチェスの続きをしたいだけよ」

勉学ではハーマイオニーに全く及ばないが、ロンのチェスの腕は超一流だ。
十回勝負して一回勝てれば良い方だが、このところさらに負けが込んでいるらしい。
ハーマイオニーは『必勝!!チェスの裏技』という本を始終眺めている。

「僕が相手になろうか」
「ハリーは駄目!」
ハリーの提案を、ハーマイオニーは言下にはねつける。
「ハリーってば、私が負けそうになるといつも手加減するでしょ。わざと負けてもらっても、嬉しくないもの」
「そんなことしないよ」
「嘘よ!」

ふくれ面をしたハーマイオニーは聞く耳を持たない。
実際それは真実なのだから、ハリーも強いことは言えなかった。

「とにかく、見付けたらすぐに教えてね」
言い残すと、ハーマイオニーは一目散に駆けていく。
残されたハリーは彼女の後ろ姿が廊下から消えても、まだ同じ場所で佇んでいた。

 

 

「ハリー」
呼び掛ける声に、ハリーはハッとして振り返る。
背後に立っていたのは、大柄な体躯の森番。

「・・・ハグリッド」
「どうした?何かあったのか」
「何で」
「何だか、元気がないように見えたから」
心配そうに自分の顔を窺うハグリッドに、ハリーも困ったような表情をした。

「最近、変なんだ」
「変?」
「胸が急にどきどきしたり、痛くなったりする。病気、なのかもしれない・・・・」
ハリーは不安げに自分の胸に手をやる。
その様子に、ハグリッドもやや緊張して顔を引き締めた。

「どんなときに、そうなるんだ」
「ロン達といるときだよ。ハーマイオニーがロンにだけ話しかけたりすると、ここがぎゅっと痛くなる、逆にハーマイオニーが笑うと僕も嬉しくて、凄くどきどきする」
傍らのハグリッドを見上げ、ハリーは悲しげに眉を寄せる。
「今は彼女がいなくなって、何だか寂しい気分なんだ・・・・」

 

話を聞き終えたハグリッドは、感慨深げにハリーを見つめる。

「ハリー、お前は本当に素直な子だなぁ」
「え?」
「ハリーはきっとハーマイオニーのことが好きなんだな」
苦笑いを含むその声に、ハリーはきょとんとした顔をする。

「好きだよ。ハグリッドのことも、ロンのことも」
「そういうのとは、ちょっと違うんだよ」
ハグリッドの笑いはさらに深まる。
「まぁ、病気じゃないから心配することはないさ」

 

ハグリッドが大きな手でハリーの頭を撫でると、彼はようやくいつもの笑顔を見せた。
だが、ハグリッドの方は何とも言えない複雑な胸中だ。
おそらく、思春期の子供を持つ親はこうした気分なのだと思いながら、去っていくハリーの後ろ姿を見送った。


あとがき??
妙に生ぬるい・・・・。
ハリーの性格をかわいこちゃんにしたら、違和感大爆発な話になってしまった。
ハーハリな別バージョンも書きます。


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