仕掛け


「最近、ハーマイオニーが変なんだ」

珍しく、一人でハグリッドの小屋を訪れたハリーは、ため息混じりに呟く。
飼い犬に餌をやっていたハグリッドは、怪訝な表情で振り返った。

「変って、どんな風にだ」
「僕のこと、よく睨んでるんだ。それで振り返ると、すぐに目をそらすの」
「他には」
「えーと、友達と話してると間に割り込んでくる。それでハーマイオニーが僕の腕を引っ張るから、話がいつも中断しちゃうんだよ。ハーマイオニーは何か怒ってるみたいだし」
「・・・その友達ってのは、どんな子だ」
「ハンナとか、リサ、かな。ロンと一緒のときは普通なんだけど」

 

何か思案するように上を向くと、ハグリッドは再びハリーを見る。

「ハンナやリサってのは、女の子だな」
「そうだよ」
何を当たり前のことを言うのかと、ハリーは首を傾げる。
少ない証言ながら、ハグリッドはおおよその見当がついた気がした。

「ハーマイオニーは、ハリーのことが好きなんだ」
愛犬の頭を叩くと、ハグリッドはハリーの隣りの椅子に腰掛ける。
「分かってるよ。友達だし」
「いや、いや。そういうのとは、また違う」
苦笑するハグリッドに、ハリーはますます訳が分からないという表情になった。

「つまりな、ハーマイオニーはお前に恋をしてるんだ。睨んでると思ったのは、見詰めていたの間違いだし、話の腰を折るようなことをするのは、話している相手の女の子に嫉妬してたんだな」
「・・・・恋?」
「たぶんな」
目を丸くしたハリーに、ハグリッドは頷きながら応える。

 

 

そのまま黙り込んだハリーだが、ハグリッドの言葉を呑み込むと同時に、徐々に体温が上昇していくのを感じた。
顔が熱くなり、自然と汗がにじみ出してくる。

「ハリー?」
心配したハグリッドが体に触れる前に、ハリーは椅子から立ち上がる。
「か、勘違いだよ、ハグリッド。ハーマイオニーは友達なんだ。こ、恋とか、そんなの、あ、あるわけないよ!」
どもりながら言うと、ハリーは戸口へ向かって歩き出した。

「そろそろ夕食だし、もう、帰るから」
言うが早いか、ハリーはその場で派手にすっころんだ。
床には、障害物となるものは何もない。
落とした眼鏡を拾うハリーを見下ろし、この調子だと寮につく前にあと3回は転ぶのではないかと、のんきなことを考えるハグリッドだった。

 

 

 

「最近、ハリーが変なの」

一人でハグリッドの小屋にやってきたハーマイオニーは、ぽつりと漏らす。
飼い犬に餌をやっていたハグリッドは、どこかで聞いた台詞だと思った。

「変って、どんな風にだ」
「避けられてる気がするの。私と目が合うとすぐ真っ赤になるし、ちょっと抱きついただけで「慎みを持った方がいい」だなんて、説教されて。前は全然平気だったのに」
ハーマイオニーは、ぷーっと頬を膨らませる。
可愛らしいその仕草に、ハグリッドは笑いながら彼女の頭を撫でた。

「それは、ハリーがお前さんを女の子として意識してる証拠だな」
「どういう意味?」
「ハリーは、ハーマイオニーのことが好きなんだ」


あとがき??
ハグリッドが二人の恋を取り持ってますね。恋の仕掛け人です。(笑)
自分のことを好きなのだと知ったとたんに、相手が可愛く見えてくるとかって、あるんですかね??
いや、ハーマイオニーは十分可愛いんですが。


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