SOUL KISS××× U


ハーマイオニーが目撃した場面は、こうだ。
涙声を出すジニーと、彼女と向かい合うハリー。
ジニーはしきりに何かをハリーに謝っている。
そのことに、ハリーは随分と困惑しているようだった。

場所は人気のない廊下。
話し声に気付いたハーマイオニーはすぐに柱の陰から声をかけようとしたのだが、ジニーの切羽詰ったような声音に足がすくんでしまった。
何か重要な話をしている。
立ち聞きをするつもりなどなかったのだが、寮に戻るためにはどうしても彼らの前を横切らねばならない。
されとて、会話の邪魔をするのも、気まずいものがある。
そういったわけで、ハーマイオニーは不本意ながらも二人の様子を窺っている。

 

「・・・気にしなくても・・・・・」
「でも・・・」
距離があるせいか、会話は切れ切れにしか聞こえない。
ハーマイオニーは思わず魔法で聞き取れるようにしようかと思ったが、呪文を唱えればすぐに気配を悟られてしまう。
二人はいつの間にこのような場所で人目をはばかり逢瀬を交わす仲になったのか。
ハリーに密かに想いを寄せるハーマイオニーにしてみれば、気が気ではない。

ふいに、二人の会話が途切れた。
ジニーのすすり泣く声も。
訝ったハーマイニーは柱からそっと顔を出す。
そのまま、彼女は大きく目を見開いた。
どこかに立ち去ったわけではなく、ハリーとジニーは同じ場所にいた。
そして、合わされた唇。

キスしてる。

 

ハーマイオニーの中で、何かがブチリと音を立てて切れた。
「ハリーー!!」
荒々しい呼びかけに、ハリーは驚いて振り返る。
ハリー、そして同時に振り向いたジニーの目には怒りに握り拳を震わせるハーマイオニーの姿。
「ハー・・・」
続くハリーの言葉は、分厚い参考書によって遮られる。
ハーマイオニーの投げつけたそれは、見事にハリーに顔面を直撃していた。
反動で、ハリーはその場に尻餅をつく。

「・・・ッターー」
「だ、大丈夫、ハリー!」
目を白黒とさせるハリーに、ジニーが慌てて駆け寄る。
その様は、ハーマイオニーの神経をよけいに逆なでした。
「馬鹿!!!」
いきり立った声で言うと、ハーマイオニーは寮とは反対の方へと駆け出した。

ハーマイオニーの瞳から大粒の涙が落ちる。
すれ違った生徒がじろじろと見詰めてくるが、そのようなことは気にならなかった。
それほど、ハーマイオニーの心は乱れていた。

 

「ハーマイオニー」
振り返るまでもなく、分かる。
ハリーの声。
足早に歩くハーマイオニーに追いつくと、ハリーはいつもと変わらぬ声で彼女に呼びかける。
「ハーマイオニー、これ」
ハリーは先ほどハーマイオニーが投げつけた参考書を差し出す。
ハーマイオニーはハリーの顔を見ずに、参考書を奪い取った。

「何怒ってるの」
「起こってないわよ」
「嘘」
「本当よ」
ハーマイオニーはつっけんどんに返す。
「じゃあ、どうして泣いてるの」
「泣いてないわよ」
頬の涙を拭うが、それは止め処なくあふれてくる。
ハーマイオニーは舌打ちしたいような気持ちになった。

 

同じような問答を繰り返し、二人は校舎の中庭までやって来る。
そこに、何事かと二人のやり取りを面白げに眺める見物人がいないことは幸いだった。

「ハーマイオニー」
「何よ!!」
しつこく自分のあとを付けまわすハリーに、ハーマイオニーは勢いよく振り返る。
すると、腕を引いて引き寄せられた。
驚く間もなく、唇を奪われる。
硬直したハーマイオニーの手から、ハリーに返された参考書がすべりおちた。

どれほどの時間が経過したのか。
唖然とするハーマイオニーに、ハリーは嬉しげに微笑んだ。
「泣き止んだ」
ハーマイオニーは最初ハリーが何を言ったのか分からなかった。
「な、な、な・・・」
「女の子が泣くのを見たくないんだ」
どもるハーマイオニーの質問を察し、ハリーが答える。
「こうすると、女の子が泣き止むから。TVで知ったんだけど、当たってたね」

罪の無い笑顔を浮かべるハリーに、ハーマイオニーは脱力して肩を落とした。
ハリーの見解は時として一般人とずれていることがある。
特殊な環境で育ったせいか。

 

ハーマイオニーが絶句している間に、ハリーはジニーとの経緯をかいつまんで話した。
ジニーの失敗作を食べ、彼女がそれを涙ながらに謝罪したことを。

「しょっぱいクッキー、本当に美味しいと思ったんだけどな」
ハリーは頭をかきながら呟く。
もっと不味いものなど、ダーズリー家で何度も食べさせられた。
彼は正直に感想を言っただけなのだが、ジニーはそうは取らなかったらしい。
親切心から、無理をしていると思ったようだ。
「それで、ジニーが泣くから、キスしたの」
「そう」
ハリーはあっさりと頷く。

ハーマイオニーは真面目な顔つきでハリーに厳しく忠告する。
「キスはね、好きな子とするものなのよ」
「そうなの」
「そうよ。だから・・・」
ハーマイオニーはそこから急に声を小さくした。
「もう、他の女の子としないでね」

 

ハリーはきょとんとした顔でハーマイオニーを見ている。
ハーマイオニーはキスは好きな子とするものだと教えた。
そして、それを自分以外とするなと言っている。
これでは、愛の告白をしていることと一緒だ。
ハーマイオニーは再びこの場から駆け出して逃げたい衝動にかられたが、何とかこらえた。
顔を真っ赤にして俯くハーマイオニーに、ハリーは淡く微笑む。

「うん」
顔をあげると、ハーマイオニーはハリーに抱きすくめられていた。
優しく、頭をなでられる。
「君がまた泣くと嫌だしね」


あとがき??
タイトル、凄いディープなキスって意味だったんですね。
安易につけてしまって後悔。(笑)
もちろん
CHARAさんの曲から。

間をあけてしまったらまるで書けなくなってしまってビックリしました。
いや、ハリー部屋を作ったときが映画を見た直後で異常にもえてただけですが。
どうやら、私は原作ではハーマイオニーの活躍を一番期待しているけど、自分が書くとハリーが一番いとおしいらしいです。
キャラ設定がもろ好みなので。
女の子至上主義のこの私が、非常に珍しいです。
ストーリーは最後まで決まっていたので、書き出したらすぐに完成しました。
1より2のがすらすら書けたのは、やはりハリハーだからか。

えーと、作品について。
あの前振り(ジニーの話)は一体何だったんだ、ってくらいラブなハリハーっすね。(笑)
こっちを書きたかったのですよ。メイン。
キスなんざ外国じゃ日常茶飯事でしょうが、挨拶とは別の、恋愛含んだキスということで。

映画上映中、ということで一時的に部屋を作っただけなので、たぶん更新はこれで最後。
ご要望があれば、また書きますが。
私の書く別人28号ハリハー、読みたいですか?(笑)


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