転校生(サクラ編・その1)
サクラの精神がカカシの体に入ってから、一週間。
二人は妙な共同生活を送っていた。
サクラの両親には、7班の合宿のため、暫くカカシの家に泊まり込むと言ってある。
だが、実質は二人きりで同居している状態だった。二人が入れ替わって事実は、ツナデにだけは正直に伝えてある。
彼らを診断したツナデは何とか信じてくれたのだが、誰にも秘密にしておくよう厳命されてしまった。
素でそのようなことを言っても、気が狂ったと思われるのがオチだ。
よって、サクラがカカシになっていることを知っているのは、本人達の他はナルト、サスケ、ツナデの三人だけだった。
「ううっ・・・・・」
「もう泣くのはやめなさいって。いい加減、慣れたでしょう」
「・・・慣れたくない」
サクラの涙の訴えは、カカシが彼女の頭にお湯をかけたせいでかき消される。
共同生活が一週間目に突入したということは、二人が一緒に風呂に入り始めて6日経ったことだ。
むやみに体を触られたくないサクラは、風呂場で彼の背中を流し、自分も洗ってもらっている。
その間、ずっと目を瞑っているのが、カカシは可笑しくてしょうがない。「サクラ、そんなんでちゃんと男子トイレ入っているの?」
「間違えて女子トイレに入りそうになる・・・」
だが、それではただの変態だ。
なるべく個室で用を足しているが、どうしてもソレは目に入ってしまう。
「えへへー、それで、俺のって他の人と比べてどんな感じ?」
「知らないわよ、そんなの!!」
顔を真っ赤にしたサクラは声を荒げて反発する。
12歳の乙女であるサクラに正直な感想など言えるはずもなかった。
「はーい」
先に風呂からあがり水を飲んでいたカカシは、チャイムの音に気づいて玄関へ向かう。
鍵を開ける前に確認すると、それはいつもここに来る顔見知りの宅急便屋だった。
「判子、判子」
荷物を受け取るために判子を手に持ち、カカシはすぐに彼を迎え入れる。
「お待たせしましたーー!!」
「は・・・・」
何か言おうとして、配達人の若い男性はそのまま笑顔を凍らせた。カカシとは何度も会っているせいで、てっきり彼が出てくると思っていたのだ。
それが、実際に顔を見せたのは可愛らしい少女だった。
だが、それだけで彼もここまで驚いたりはしなかっただろう。「通販で買った座椅子、ようやく届いたんだ〜v」
配達人の動揺など知らず、確認の判子を押して荷物を見たカカシは嬉しそうに顔を綻ばせる。
タオルを首からかけたカカシは、下はクマの柄のパンツのみを穿いていた。
独身男性の部屋から半裸の少女が出てくれば、驚くなという方が無理な話だ。
「どうも、ご苦労様でした!」
にっこり笑顔のカカシはあっさりと扉を閉める。
呆然と佇む配達人は、暫くの間、瞬きをするのも忘れてその場に立ちつくしていた。
「カカシ先生――――!!!!」
振り返ると、鬼のような形相のサクラが仁王立ちをしている。
「え、何、どうしたの」
「そんな格好で扉を開けるなんて、どういう神経しているのよ!!!!」
「あっ」
言われて初めて、カカシは自分の姿を上から下まで眺めた。
「・・・・いつも風呂あがりはこんな感じだから、つい。ごめんね」笑いながら謝罪するカカシに、サクラは泣き崩れる。
「もう嫌よこんな生活ーー!!私、お嫁に行けないーーーー!!」
「大丈夫、大丈夫。いざとなったら、俺がもらってあげるから」
「何の解決にもなっていないわよ、馬鹿―――!!」
パンツのまま慰めるカカシに、サクラの声はさらに荒れたものになってしまった。
その日、サクラはこの家に来て初めて一人で夜を過ごしていた。
カカシはツナデから命じられた任務をこなすため、装備を調えて森へ行ったはずだ。
敵のスパイを追う大事な任務。
先に寝るよう言われているが、サクラは心配で眠ることなど出来ない。
カカシの身に何かあったら、自分は戻る体を無くしてしまうのだ。
このまま誰にも内緒で他人の人生を歩むなど、考えただけで寒気がする。「早く帰って来てよぅ・・・」
カカシの出ていった窓の近くに膝を抱えて座り、サクラは滲んでくる涙を必死にこらえていた。
すると、サクラの願いが天に通じたのだろうか。
硝子をノックするその音に、顔を上げたサクラは慌てて立ち上がった。
「先生――!!!」
窓を開けるなり飛び付いてきたサクラを、カカシは何とか受け止める。
「怪我はなかった?」
「・・・平気」
サクラをどけると、カカシは靴を脱いで窓の鍵をしっかりと閉めた。
そしてサクラに向き直るなり、小さな声で呟く。
「金縛りの術」
「え」素早い動きで印を組むカカシを呆然と眺めたサクラは、身動き出来ずに倒れ込み、初めて彼が自分に向かって術をかけたと悟る。
「ちょ、ちょっと、先生、どういうつもりよ!!!」
「サクラとエッチなことしようと思って」
自分にのし掛かり、服を脱がし始めたカカシにサクラは仰天する。
「正気!?」
「俺さ、夜に人を殺すと、誰かを抱きたくなるんだよね。サクラの体で男を誘うわけにもいかないでしょ」
「当たり前じゃない!!」
「だから、サクラとしようと思って」
「や、やめてよ」
唯一動く口で抵抗の意思を見せても、体が微動だにしないのでは意味がない。
だが、しくしくと泣かれていては、気が散るのだろう。
一度手を止めると、カカシは上からサクラの顔を覗き込む。「このまま外に出ていっても、いい?」
「・・・・・」
唇を噛みしめたサクラは、涙をためた瞳でカカシを見る。
行きずりの男に自分の体を好き勝手にされると思えば、現状の方が幾分マシだろうか。
「・・・やり方、分からないわよ」
「だろうねぇ」
悪戯な笑みを浮かべたカカシは、サクラの唇に口づける。
「サクラはじっとしていればいいから」
あとがき??
いろんな意味で、もえつきる。
サクカカでエッチな場面を書きたくて考えた話でしたが、もう満足です。
カカシ先生とサクラがお互いの体を洗いっこしている場面を想像するだけで、もう・・・・。
任務に向かったカカシ先生の仕事ぶりは、カカシ編で。
転校生(サクラ編・その2)に続く →