房事


七班で旅をすると、宿泊先でサクラは決まって個別の部屋を与えられた。
まだ12の子供とはいえ、女の子のサクラに気を遣っているのだとナルトもサスケも思っている。
だが、実際はカカシが自分の行動しやすいように部屋割りをしたに過ぎなかった。

 

「これで絶対に入ってこられないわよ!」
ふすまの前にバリケードとしてソファや机を運んだサクラは、腕組みをして頷いていた。
窓には侵入者がいれば大きな音を発する呪符をそこかしこに貼り、万が一に入り込まれれば天井裏から外に逃げ出せるようにルートを確保してある。
今夜こそ、誰にも邪魔されずに熟睡するのだ。
「お休みなさいー」
すっかり安心したサクラが布団に体を入れ、枕に頭を乗せると背中に暖かな感触がある。
「随分ばたばたと騒がしかったねー。もう終わった?」
「ギャーーー!!!!」
ワンテンポ遅れて悲鳴を上げたサクラは、慌てて飛び起きようとしたがそのまま後ろから体を抱きすくめられた。
せっかく準備したというのに、ここまで侵入を許せば上忍相手に逃走は不可能だ。
無念の涙を滲ませるサクラを気にせず、襟元から手を差し入れるカカシは彼女の首筋にキスをしている。

「いっ、いつからこの部屋にいたのよ」
「サクラがお風呂から戻ってくる前」
「・・・・その後の食事の席に先生もいたじゃない」
「あれ、俺の分身」
えへへっと笑って自分を見下ろすカカシに、サクラは歯噛みするしかない。
サクラが無駄な対策をあれこれ練っているのを黙って見ていたのだから、人が悪いとしか言いようがなかった。
「日付が変わる前に寝たいんですけど・・・・」
「サクラ次第かなぁ」

 

 

 

その次の夜もサクラの完敗だった。
怪しげな媚薬を一服盛られたらしく、さしたる抵抗も出来ずに押し切られてしまい、翌朝はまた寝不足だ。
よって旅も四日目となったサクラは異常なほど慎重になっている。
「・・・・・・・サクラちゃん、何それ」
「毒が入っていたら、すぐ反応するのよ」
昨夜と同じ鉄は踏むまいと、サクラは自分が口にする全ての皿にリトマス試験紙のような物を試している。
何か薬物が入っていれば、青い紙が赤く変わるのだ。
ナルトは怪訝そうにサクラの作業を見つめていたが、リトマス試験紙が赤く変わることはなかった。

「サクラちゃん、全部の食事でそんなことするの?大体、この国は治安がいいし、木ノ葉隠れの里の忍びを狙う間者なんてそうそういないと思うけど」
「・・・・・そんなの、分からないじゃない」
サクラは向かい側の席に座るカカシを見据えながら言う。
敵は外部ではなく、内にいるのだ。
用心するにこしたことはない。

「先生、前から思っていたんですけど、私だけ個室なんて特別扱いはしなくてもいいです。今夜からみんなと一緒の部屋で休みたいんですけど」
「えっ!」
サクラの提案にナルトは驚きの声をあげたが、カカシはにっこりと笑って頷いた。
「いいよ、別に。じゃあ、ご飯が終わったらサクラの荷物を移そうか」
「・・・・はい」
意外なほどあっさりと承諾したカカシに、サクラは安堵よりもむしろ不安を覚える。
そして悪い予感ほど的中してしまうのがこの世の常だった。

 

「信じられないーーーー!!!」
「サクラもちょっと読みが浅かったよねぇ」
にこにこと笑うカカシは、いつもと同様にサクラの手足の自由を奪って浴衣を脱がしにかかっている。
サクラが助けを期待していたナルトとサスケは同じに部屋にいた。
だが、いるだけだ。
傍らでカカシとサクラがもみ合っているというのに、不自然なほど寝入っている。
「今日は、ナルトとサスケの方に一服盛ってみました」
笑顔でサクラの疑問を解消するカカシに、彼女はもはや開いた口が塞がらなかった。
薬が効いて寝ているとはいえ、傍らに人の気配を感じながら事に及ぶのは非常に落ち着かず、いつ彼らが目覚めるか気が気ではない。
声を押し殺したところで我慢にも限度があり、サクラが一際甲高く鳴くよう仕向けるカカシが憎らしかった。

翌朝、カカシの布団で横になるサクラを見たナルトは「人の布団に潜り込むなんて、サクラちゃん寝相悪いんだねぇ・・・」と呆れていたが、サスケは彼女の移動の理由をうっすらと察したようだ。
目が合うたびに、非常に気まずい。
この日からまた個室に戻してもらうことを心に決めたサクラは、素知らぬ顔のカカシを厳しい眼差しで見つめていた。

 

 

 

「今夜こそ!!!」
夜中の10時すぎ、布団の上に座るサクラは一人でガッツポーズをしている。
全て後手に回ってしまうことがサクラの敗因なのだ。
この日サクラは、カカシの食事に密かに眠り薬を入れておいた。
効き目が緩やかですぐには眠くならず、丁度今頃カカシは布団に入って熟睡しているはずだ。
「初めての勝利だわ」
鼻歌を歌って布団をめくったサクラは、そこにいるはずのない人物を見つけ驚愕に目を見開いた。

「サクラってば、可愛いねーvv」
笑顔でサクラに抱きつき、そのまま彼女を布団に押し倒したのは憎い相手であるカカシだ。
「な、な、な、何でーー!!!」
いつの間に部屋に入り込んだのか、カカシはサクラの目の前で握っていた掌を開いて見せた。
そこにあったのは、サクラがカカシに飲ませたと思っていた眠り薬だ。
「錠剤なんて、甘い甘い。やっぱり粉薬じゃないと」
「・・・・・」

肩を掴まれ、唇を寄せてくるカカシにもはやサクラはぐうの音も出ない。
あの手この手と考える度にカカシをただ楽しませているだけのようで、サクラは無性にむなしくなってきた。
自分からカカシの首筋に手を回したサクラは、彼の瞳を間近に見据えて訊ねる。
「先生、この任務ってあとどれくらいかかるの?」
「えーと、往復であと一ヶ月くらい、かな」


あとがき??
近頃NARUTOテンション低いのでカカサクの初心に帰ろう(?)と思ったら、何故かエロエロになりました。おかしいな・・・・。これが初心。
拍手おまけSS用だったんですが、まずいかもしれないと思い、こっちに移動。
二人は恋人同士・・・・なんでしょうかね。両思い設定と考えての続き
。結構、蛇足。
ちなみにナルト達はカカシ(分身)が隣りに寝ているため、毎夜彼がサクラの部屋に通っているとは知りません。


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