ミイラ取り
「サクラちゃんが人間界に!!?」
「そーなのよ。小旅行かと思ったら、なかなか帰ってこなくて。何だか人間の男と結婚したって噂だし」
「えええーーーーーーーー!!!」
絶叫したナルトは、大きな口を開けたまま二の句が継げなくなる。
確かに近頃サクラを見かけなかったが、まさかそんなことになっているとは、思いもしなかった。
「あんた、暇ならちょっと様子見に行ってきてよ」
いのは命令口調で人間界へ続く道を指差したが、サクラの身を心配するナルトは、言われなくてもそのつもりだった。
「このあたりかなぁ・・・」
人間に扮したナルトは、いのから貰った住所のメモを頼りに、その家を探し当てる。
玄関には『はたけ』という表札が出ていて、間違いないはずだ。
チャイムを鳴らしたナルトは、少しばかり緊張した面持ちで住人が出てくるのを待った。
「はいはいー、ちょっと待ってくださいー」
覚えのある声が聞こえ、扉はすぐに開かれる。
出てきたのは、桃色の髪を後ろで束ねた、20歳前後の女性だ。「・・・・ナルト?」
サクラは目を瞬かせてナルトの顔を見つめたが、ナルトは大人の姿に成長したサクラと昔の彼女が頭の中で重ならず、戸惑うばかりだ。
「いいところに来たわね!ちょっと手伝って」
「え??」
ナルトの手を掴んだサクラは、躊躇している彼を強引に家の中へと引っ張り込む。
「うっかり魚を焦がしちゃって。少しの間あやしておいてね。はい」断る隙さえ与えられず、サクラから赤ん坊を受け取ったナルトは、キッチンへと向かった彼女を慌てて追いかけた。
「こ、この子、誰?」
「私の子に決まってるじゃない。カイって名前なの。可愛いでしょう」
「えーー!!?だ、だって、サクラちゃん人間界に来てまだ10年くらいなんじゃあ・・・」
「人間はそれだけあれば子供だって作れるのよ。ほら、泣きそうになってるわよ。向こうにオモチャがあるから」
キッチンから追い出されたナルトは、床に座り込んで鈴のオモチャで赤ん坊をあやし始める。
驚きの連続で頭が飽和状態なため、取り敢えず赤ん坊に気持ちを集中させることにした。
「・・・・ん?」
視線を感じて傍らを見ると、いつからいたのか、3歳ほどの幼女がナルトの顔を凝視している。
桃色の髪に緑の瞳の、サクラにうり二つの容姿だ。
聞かずとも分かる気がしたが、ナルトは部屋に戻ってきたサクラに恐る恐る訊ねてみた。
「あの、この子もサクラちゃんの・・・」
「娘のモモよ。でも、珍しいわねー」
「えっ?」
「その子、人見知り激しくて初対面だと絶対懐かないのに、ナルトには平気みたいね」
サクラがナルトからカイを受け取ると、モモはすぐにナルトの膝に乗っかった。
にこにこと笑ってナルトを見上げる彼女の姿と、人見知りという言葉はどうにも当てはまらない。「モモ、これはナルトよ。ナルトお兄ちゃんって呼びなさいね」
「・・・なるにーちゃ?」
つぶらな瞳のモモにたどたどしく名前を呼ばれ、ナルトは胸に妙な痛みが走ったのを感じた。
ほにかんだ笑顔は、まさに天使と見紛うほどの愛らしさだ。
「可愛いーー!!サクラちゃん、この子、俺に頂戴」
「モモがいいなら、別にかまわないけど・・・」
ナルトが抱きしめても、モモは怯えるどころか嬉しそうに笑い声を立てていた。
よほどナルトのことが気に入ったらしい。
「モモは普通の人間だから、ナルトもこっちに住むのが条件よ」
「うん!」首を縦に動かすのと同時に、何か物が落ちるような音がして、ナルトはその方角へと顔を向ける。
スーパーに紙おむつを買いに行っていたカカシが、いつの間にか帰宅していたようだ。
扉の前で青い顔をして震えているカカシに、サクラは笑顔で声をかけた。
「ああ、パパ、お帰りなさい」
「む、娘はどこにも嫁にやらんぞーーー!!!」
サクラに続き、ナルトの姿まで見かけなくなって、さらに数年経った。
人間界で仕事をして戻ったシカマルは、そこでナルトと顔を合わせたそうだ。
「いの、ナルトの奴、サクラの娘婿に決まったみたいだぞ」
「え、何で!!?」
ナルトならばサクラを連れ戻せるかと期待していたというのに、まるで当てが外れてしまったようだった。
あとがき??
カカサク夫婦の娘×ナルトは、うちのサイトでは決定カップリングです。
サクラ似の少女と、死神サクラと、サクラの娘、3人もサクラを書けて幸せでした。