(おまけ)

 

「フンフン〜〜♪」
鼻歌を歌いながら家から出たヤマトは、扉を閉めるのと同時に現れたカカシに、「ひぃっ」と顔を引きつらせた。
元々壁際に立っていたようだが、開いた扉の陰で完全に死角になっていたらしい。
「す、ストーカーですか!?」
「アホか、何で俺が男に対してストーカー行為をしないといけないんだ」
怒りに声を震わせるカカシは、怯えた様子で後退るヤマトに、さらににじり寄る。
「お前、最近俺の可愛いサクラにちょっかいだしてるそうじゃないか。いい度胸してるなぁ、おい」
「先輩、ヤクザみたいです。それに、まだ何もしていませんよ」
「まだ!!?」
語調を強くしたカカシは、懐から素早くクナイを取り出した。
「じゃあ、これからやるってことじゃないか!」
「うわぁ!!!」
クナイを握ったカカシの腕と何とか掴んだヤマトは、彼の気持ちを落ち着けようと必死に語りかける。

「れ、冷静に、話を聞いてください。サクラがいつも俺に「好き」って言ってくれるのは仲間に対する気持ちで、特別な意味はないですって」
「・・・・言われたことない」
「えっ?」
「俺はサクラに「好き」だなんて言われたことないぞーーー!!!のろけか、こんちくしょーー!!」
「ひーーーー!!!」
ヤマトの言葉は逆効果だったらしく、彼の腕を振り払ったカカシは泣きながらその首を締め上げた。
本気で殺される。
視界がかすみ、三途の川が見え始めたヤマトの耳に、微かだが廊下を走る足音が聞こえたような気がした。

 

「カカシ先生!!」
悲鳴まじりの声が周囲に響くと、ヤマトの首に回っていた手の力が少しだけ緩んだ。
「ヤマト隊長に何てことするのよ!!やめて!」
サクラがカカシを突き飛ばしたことでようやく解放され、咳き込んだヤマトの背中を彼女は撫でさする。
「サクラ、やっぱりこいつの方がいいのか・・・・」
「何の話よ。大丈夫、ヤマト隊長」
「あ、ああ・・・」
不安げにヤマトを介抱するサクラを見たカカシは、瞳に涙を滲ませて泣き喚いた。
「サクラの馬鹿ぁぁーーーー!!!」

ばたばたと走り去るカカシを唖然として見送ったサクラは、暫くして怒りがこみ上げてきたようだ。
「誰が馬鹿よ!ヤマト隊長、何でこんなことになったんですか」
「いや、ちょっといろいろあって・・・。それより、サクラはどうしてここに?」
「ヤマト隊長、今日仕事がお休みだって言っていたから、暇だったら一緒に出かけようと思って。この前約束したネズミーランドでもいいですよ」
うふふっと笑ったサクラに、ヤマトはつい先程死にかけたことも忘れて、頬を緩ませた。
彼女が恋人になってくれたら、それは幸せな毎日を送れそうだ。
カカシという大きな障害が残っていることは、今だけは忘れることにする。

 

「ああ、首にあとが残ってる。本当にもう大丈夫ですか?」
「うん。でも、先輩が少し可哀相だったかな・・・・」
「カカシ先生が?こんなひどいことしたのに、何で?」
「だって、ほら、先輩は君のことが好きなのに、あんなに邪険にされて」
「えっ」
甲高い声をあげたサクラは、まじまじとヤマトの顔を見つめた。
「カカシ先生が、私のことを?」
「サクラは気づいてなかったみたいだけど、みんな知ってるよ。思い当たること、ない?」
「・・・・・・・」

頬に手を当てて考えると、カカシから受けた数々の嫌がらせがサクラの脳裏をよぎる。
出かけようとするとカカシに邪魔をされ、デートの相手が何故か次の日から冷たくなるのだ。
しつこく聞き出すと、カカシがサクラに近づかないよう、彼らに脅しをかけていたことが分かった。
今までたんに人をおちょくるのが趣味なのだと思っていたが、サクラへの好意からきたものだとすれば全てに説明がつく。
瞬間、サクラの顔が耳まで赤く染まった。

「サクラ?」
「うわっ、あの、ちょっとびっくりして・・・・。き、気にしないでください」
動揺したサクラは恥ずかしいのか、真っ赤な顔をヤマトから背けて手を振っている。
これは予想外の反応だ。
知らず知らずのうちにサクラもカカシを慕っていたのかと思うと、急にヤマトの心にもやもやしたものがわき上がってくる。
俯いたままのサクラを眺めつつ、今ならば恋敵の首を絞めるほど興奮したカカシの気持ちが、少しばかり分かりそうだった。

 

あとがき??
サクラはヤマト隊長のことが好きなんですよ。
でも、カカシの気持ちを知って急に気になり出すという、少女漫画な展開。
これから頑張ればカカシ先生も何とかなりそうです。

 

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