beautiful dreamer


真夜中に目が覚めた時、傍に誰かがいないと、とたんに不安な気持ちになる。
これは子供の頃から変わらない習性。

だけど、その日目を開けると自分は一人ではなかった。
電灯台の小さな灯りに照らされて、看病疲れした顔が見える。
居眠りをしているその人の目は堅く瞑られている。
良かった。
今までのことは全部夢だったのだ。

手を伸ばして面窶れした頬に触れてみる。
暖かい。
それだけで、たまらなく幸せになる。
自分をこのような気持ちにさせることができるのはこの人しかいない。

頬の手に気付いたいとおしい人が、自分に薄い微笑みを向けた。
「疲れた・・・」
そう言うと、その人は自分に向けられた手を強く握り締めてきた。
「長い間眠ってたからね」
少しの会話でも傷がうずく。
顔を歪めた自分にその人は
「生きて帰ってきてくれて良かった」
と言って、泣いた。

涙。
今までの自分ならその涙の意味に気付くことはできなかった。
「死んだら泣くよ」
誰がとは言わない。
驚いた顔をしたその人は、涙を浮かべた瞳で嬉しそうに笑った。

死んだのは里を離れた自分の方だった。
だけれど、仲間の必死の蘇生術によりなんとか息を吹き返すことができた。
重傷の自分は体を動かすことがままならない状況。
混乱する意識の中で、不可思議な夢ばかりみる。
それとも、この世界こそが眼前にいる不幸な人がみている夢なのか。

考えるのも億劫になってきた。
どちらでもいいことだ。
この人が傍にいてくれるのなら。

 

そして夢はケイゾクされていく・・・


あとがき??
かなり蛇足。
部屋片付けてたら映画版「ケイゾク」のノベライズが出てきたので、ちょっと書いてみた。
10分で完成。(笑)
さて。
どれが夢でしょう。


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