KISS KISS KISS 


木ノ葉隠れの里の繁華街にある、やまなか花店。
ぼーっとした顔で来客用椅子を陣取るサクラに、いのは冷ややかな視線を向ける。

「邪魔なんだけどーーー。あんた、いつまでいる気?」

いのがいくら横柄な言葉を投げても、サクラはまるで反応をしない。
いつもなら怒って3倍は言い返すのだが、サクラは黙り込んだままだ。
「・・・・サクラ、何かあったの」
さすがに心配になったいのは、静かな口調で訊ねる。

「・・・いのさぁ、顔が間近にあったら好きでもない人とキスしようと思う?」
「な、何なの、突然!!」
頬杖をついたままうつろな瞳で訊くサクラに、いのは目を丸くする。
「どうなのよ」
「思わないわよ」
「やっぱり、そうよねぇ」
取り敢えず答えたいのに、サクラはゆっくりと頷く。

「・・・男の子の場合は違うのかしら」
ぶつぶつと独り言を繰り返すサクラに、いのはどう声を掛けたらいいか分からず困惑気味だ。

 

「あのさー、私ちょっと外に出なきゃならない用があるんだけど、ずっとそうしてるなら店番頼んで良い?」
「んーー・・・」
サクラはひらひらと手を振って「分かった」と合図する。
サクラに店を任せたことはたびたびあったことで、頭の回転の速いサクラは釣銭の勘定を間違うこともない。

「すぐ戻るわよ」
いのは一言残して店をあとにした。

 

 

「あれ、いのはいないのか?」
暫くしてやってきたのは、いのと同じ10班のシカマルだ。
「どこ行ったんだよ」
「知らないーー」
てくてくと歩み寄るシカマルに、サクラは視線を前方に向けたまま気のない返事をする。
「じゃあ、ここで待つぞ」
「勝手にしたら」

サクラの傍らの椅子に腰掛けたシカマルだが、サクラが無言のままのせいか、気詰まりな感じだった。
ちょうど客足もさっぱり途絶え、沈黙が続く。

 

「・・・ねぇ」
「何だ」
「あんた、いののこと好きなのよね」
唐突な問い掛けに、椅子を傾けながら座っていたシカマルは地面に転げ落ちそうになる。
「な、何だ、それは!!」
「違うの?」

サクラはさも意外だという顔をした。
「いや、違うっていうか、その、何だ」
口籠もるシカマルを、サクラはもどかしげに見遣る。
「もー、どっちでもいいわよ。それより、顔かして」
シカマルの襟首を掴んで自分の方を向かせると、サクラはずいっと顔を近づけた。
「え、おい、ちょっと・・・」

 

ガシャンッ

 

盥をひっくり返したような音に、シカマルとサクラは弾かれたように振り向く。
サクラ達より一つ年長のリーと、買い物を済ませたとおぼしきいのが並んで店の入口に立っていた。
先ほどの音は、リーが水を張った桶をひっくり返した音だ。

「・・・・・ショックだ」
リーは額に手を遣ると、足下をふらつかせる。
「サクラさんが、シカマルくんを好きだったなんて」
「・・・は?」
「い、い、今、キスしてたじゃないの!!」
リーに追随していのも大きな声をあげる。
シカマルとサクラは顔を見合わせると、再びいの達に目線を戻した。
「しそうになっただけよ」

「うわあぁぁぁーーーー!!!」
リーはむせび泣きと共に、店から走り去る。
いのは拳を震わせて二人を睨み付けていた。

 

 

 

「シカマルに悪いことしちゃったわ」

彼女のいる少年ならば正当な実験結果が得られると思ったのだが、いのの怒りようはすさまじかった。
サクラは次からは慎重に相手を選ぼうと心に決める。

「あ、サクラちゃん!」
聞き慣れた声に振り向くと、イルカとナルトが並んで歩いていた。
「サクラちゃんも行かない?一楽」
にこにこ顔で訊ねるナルトを、サクラは凝視する。

ナルトは常日頃からサクラに言い寄っている。
イルカはサクラ達よりも10以上年上だ。
どちらも被験者としてふさわしくない。

「・・・駄目だわ」
二人を前に、サクラはため息と共に呟く。
「え、何が」
「・・・何でもない。じゃあね」
不思議そうに訊ねるナルトにそっけなく言うと、サクラは踵を返した。

 

 

 

「それで、いのがカンカンでさぁ」
「へぇ、それは知らなかったな。サクラが」
スナック菓子を食べながら喋り続けるチョウジに、アスマは楽しげに相槌を打つ。
「何の話だ」
二人の話にカカシが割って入ったのは、自分の生徒の名前が耳に入ったからだ。
報告書を提出した後の廊下では、様々な階級の忍者が行き交っている。

「おお、それがな」
カカシの参入に、アスマも興に乗って話を続ける。
「シカマルがサクラにキスされたって話だぞ」

 

ガラガッシャン

 

その場にいた忍び達の視線が音の出所に集中する。
だが、そこには倒れた防火用水のバケツがあるだけだ。
「今、ここに誰かいたかー?」
怪訝な顔で訊くカカシに、近くにいた上忍が振り返った。
「うちはサスケ」

 

 

 

「じゃあ、それはヒナタとハナビちゃんへのお土産なんですね」
「ああ。ヒナタさまは甘いものが好きだしな」
ネジは傍らのサクラに笑顔で答えた。
彼が洋菓子店から出てきたことに目を見張ったサクラだったが、そういう事情なら頷ける。

「ヒナタと、仲が良いんですね」
「・・・仲が良いとは違うと思うが。まぁ、交流はあるな」
口元を緩ませるネジに、サクラも微笑する。
ネジの柔らかな笑みは、不思議と心を和ませるものがあった。
この顔で親しくないと言われても、誰が信用するだろう。

「そうだ!ネジさん、ちょっと屈んでもらえます!?」
「どうして」
「すぐ済みますから」
サクラは質問には答えず、にっこりと笑ってネジを見上げる。
サクラの明るい笑顔はネジに危害を加える気配を全く感じさせない。

どうしたものかと思案顔になったとき、ネジはサクラの後方から近づいてくる人物に気付く。
彼はサクラのすぐ背後までやってくると、唐突にサクラの襟首をぐいっと引っ張った。

 

「い、痛!!」
首根っこを持ち上げられるようにされて、サクラは悲鳴をあげる。
「何なのよ!!!」
いきり立って振り返ると、そこには据わった目でサクラを見るサスケがいた。
驚きのあまり、サクラは開いた口が塞がらない。
放心したサクラをよそに、サスケはネジに顔を向ける。

「騒がせたな」
「あ、ああ」
サスケの怒気を含む声に、ネジは戸惑いながら答えた。
「ちょ、ちょっとサスケくん、痛いって。髪―」
ずるずると引きずられるようにしてサクラはネジの前から退散する。
サクラが何をしたかったのか、そしてサスケが何故怒っているのか、ネジは全く事情が呑みこめなかった。

 

 

 

「何やってるんだ、お前は!」
人の少ない路地に来るなり、頭ごなしに怒鳴りつけられ、サクラは肩をすくませる。
「だ、だから、顔が近かったからって、男の子は女の子と簡単にキスできるのか確かめようと思って」
「それでシカマルとキスしたのか」
「してない、してないわよ」
サクラは慌ててサスケの言葉を否定する。
「・・・・しそうにはなったけど」
「・・・」
俯いたサスケは一度大きく息を吸い込む。

「近くにあったのが、お前の顔だったからだ!!まだ訊きたいことはあるか!」
「な、ないない、ないです!!ごめんなさいー!」
サスケの怒鳴り声に、サクラは目を瞑って頭を抱えた。
疑問が解消されてすっきりするはずが、何故かサスケに怒られる羽目になり泣きたくなる。

サスケの怒りの原因とその言葉の意味に、鈍いサクラは全く気付けなかった。


あとがき??
分からない?分からないですか。
真相を知りたいという方は、どうぞ。 → 
真相
この話の前日です。
サスサクOKの方限定ですので。ご注意ください。

内容、私が書くものにしてはカップリングがすさまじいのではないでしょうか。
サスサク、シカいの、リーサク、サクシカ、サクネジ、ネジヒナ、等々。
オールキャラ!と思って書き始めたら自然にこんな感じになりました。
お子様カップリングってのはどうも書いていて筆がのらないのですが、この話はサクラの暴走振りが楽しかったです。

しかし、リク内容は「木の葉オールキャラのコメディーで実はサスサク」・・・・。 
コメディーになりませんでしたー!!!さらに、実はサスサク、ではなく、ただのサスサクです!
ごめんなさい!!!申し訳ございません!!!!(>_<)
サスサク、これで限界です。私にしてみれば、サスケの行動自体がコメディーなんですが。
お気に召さないようでしたら、もう一つ何か書きます!どうかお申し付けください。

47874HIT、有喜様、有難うございました。


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