KISS KISS KISS (真相)
「・・・ないわね」
サクラはいらついた様子で辺りを見回す。
アカデミーの用具室にはありとあらゆる忍具が揃っている。
今日の任務に必要なものを揃えてくるようカカシに言われたのだが、前の使った者がきちんと戻さなかったらしく、所定の位置に捜し物は見あたらなかった。「サスケくん、あった?」
「・・・ない」
棚の向こう側から、やはり不機嫌な声が聞こえる。
ところ狭しと立ち並ぶ棚を一つ一つ確かめなければならないのかと思うと、気の遠くなる作業だ。
サクラはため息と同時に、確認済みの引き出しを乱暴に閉めた。
いくつかの戸棚を開け閉めするうちに、サクラは建て付けの悪いものにぶつかる。
途中まで開いたそれは、押しても引いても、全く動かない。
気の短いサクラは力任せにぐいぐいと押したが、それが悪かった。
何か、軋む音がしたと思うと、サクラが怪訝な顔をするよりも早くに手前の棚が傾き始める。「・・・・あ」
あとは連鎖反応だ。
並んでいた棚が次から次へとと面白いように倒れていく。
かなり大規模なドミノ倒しと形容するのが丁度良い。
目の前で起こったことが信じられず、サクラは目を見開いたまま立ちつくす。
数秒後には、様々な忍具が散乱した部屋に呆然と佇むサクラがいた。
「そ、そうだ。サスケくん!どこ??」
我に返ったサクラは慌てて呼び掛ける。
サクラが見守る中、まず書物の山の隙間から人の手が見え、続いてサスケがはい出してきた。
さすがに怪我はないようだが、長い年月をかけてつもった埃を頭からかぶっている。
「ご、ご、ごめんなさいー!」
憮然とした表情のサスケは、必死に頭を下げるサクラの方を見ようともせずに立ち上がる。
顔を上げサスケの様子を窺ったサクラは、頬についた埃を無造作に手で擦り付ける彼の姿に仰天した。
「キャアア!!サスケくん、ちょ、ちょっと待って!!!顔に触らないで!」
大好きなサスケの小綺麗な顔が汚れていくのは、サクラにとって最大の悲劇だ。
サクラは書物の間をかき分けて進むと、ポーチから取り出した水筒でタオルを濡らしてサスケの顔を拭き始める。
幸いなことに、あまり身長差がないためサスケの額まで易々と手が届く。
今のサクラには、散乱する忍具を何とかするよりも、サスケの顔の方が何倍も大事だった。
「ああ、良かった・・・・。顔に怪我はないわ」
汚れを拭き取り元通りになったサスケの顔を間近に、サクラは心から安堵した。
しかし、見れば見るほど整った面立ちに、サクラはため息が出そうになる。
男だというのに、肌の触り心地も最高だ。
つるつるのすべすべで、手入れの必要など全くない。「ねぇ、サスケくん。何か肌に塗ってたりとか・・・・」
真剣なサクラの問い掛けは半ばで遮られる。
同じく、サクラの思考もぷつりと断ち切られた。
「うわー!何、これ。地震?」
用具室の惨状を一目見て、カカシは驚きの声をあげる。
なかなか戻ってこない二人を心配してやってきたカカシだったが、用具室の中は嵐の後のような状況だ。
二人の姿を交互に見ると、カカシは訝しげに眉を寄せる。
「・・・・何があった?」
瓦礫と化した忍具の間に立つサスケはカカシを振り返ったが、壁に背中をくっつけているサクラはカカシの声にまるで反応しない。「棚が倒れた」
言わずとも分かる答えを口にすると、サスケは屈んで自分が歩くのに邪魔な足下の書物を散らばした。
サクラの方は、未だ硬直したままだ。
「サクラ、顔赤いぞ」
「は、ええ??」
自分の身を案ずる声に、サクラは意味不明な言葉を発する。
「・・・顔、赤いけど大丈夫か」
もう一度大きな声で訊ねると、今度はしっかりとカカシと目線を合わせた。
「あ、だ、大丈夫。大丈夫よ!」
「それなら、いいけど・・・」
思い切り不自然な様子だったが、カカシはそれ以上追求するのをやめる。
「捜していた道具、10班の奴らが持って行ってたらしいんだよ。無駄足踏ませて悪かったなぁ」
カカシが喋る間にも、何かが崩れ落ちる音が部屋の隅から聞こえた。
カカシは周囲を見回しながら二人に声をかける。
「ま、ここの片づけはあとでやるとして、任務地に向かうぞ。早くしないと今日中に終わらない」
「近くにあったからだ」
サスケはサクラの前を横切る際に、そう言い放った。
意味不明なその言葉に、カカシは首を傾ける。
「何の話?」
「・・・何でもないです」用具室から出たサスケの後ろ姿を見詰め、サクラは口元に手を当てたまま答える。
唇の感触が、まだ残っているような気がした。
あとがき??
何が何だか・・・・・。
サクラちゃんが好きなのは、サスケの綺麗な顔なんですね。
サスケ坊ちゃんの行動は私には予測不可能です。
カカシ先生が来なかったら、たぶんもっと凄いことになってました。(?)
サスケは絶対むっつりスケベーですよ。ナルトとカカシ先生はオープン派。