愛の挨拶


「問題ですよ、あれは!彼女もきっと迷惑だと思っています」
「・・・・はぁ」
厳しく注意するイルカに、カカシは気の抜けた声で返事をする。
任務の報告書を提出しに来るカカシを待ち構え廊下へと連れ出したのだが、話している間中、彼は愛読書から目を離さない。
イルカの説教が耳に届いているか、はなはだ疑問だった。
カカシの無関心に負けじとイルカがさらにまくし立てようとしたとき、彼はようやく顔をあげる。

「話を要約すると・・・イルカ先生もサクラの体に触りたいってことですね」
「えっ」
「気づきました?俺が揉んでいたおかげか、最近ようやく胸のあたりに肉がついてきたんですよ」
「な、な、何を言うんですか!!!」
状況を再現しているのか、いやらしく手を動かしたカカシにイルカの顔は真っ赤になった。
日頃から、カカシはスキンシップと称してサクラの体のいたるところをべたべたと触りまくっている。
サクラの元担任として、カカシを諫めにきたイルカだが、相手は百戦錬磨の上忍だ。
声を荒げるイルカは、すっかり彼のペースにはまってしまっている。

 

「分かりました。チャンスをあげましょう」
「は?」
「明日の午前中、半日だけイルカ先生に7班の仕事を任せます。好きなだけサクラに触って結構ですよ」
「え、えええ!!?」
肩を叩かれたイルカは、目と口を大きく開けてカカシの顔を凝視する。
「ただし、触るだけですからね。サクラが可愛いからって、どこかに連れ込んで変なことしないでくださいよ」
「あ、あの・・・」
「じゃあ、明日、よろしくお願いします。木ノ葉橋の上に8時集合ですから」

イルカに手を振ったカカシは、そのまま建物の外に向かって歩き出した。
残されたイルカは、彼の後ろ姿を見つめたまま呆然と呟く。
「・・・・カカシさん、俺の話ちゃんと聞いていたんだろうか」

 

 

 

 

こうして、イルカは7班の臨時の担当教員となった。
不本意ではあったが、ナルトの任務時の様子を見られるのは嬉しい。
アカデミーを卒業して以来、あまり顔を合わせる機会のなかったサスケやサクラと一緒にいられることも、貴重だと思った。

「イルカ先生は遅刻しないから、すぐ仕事に行けるってばよ!」
「ねー、有り難いわ」
「・・・・本当に」
嬉しそうなナルトの言葉に、サクラとサスケも賛同する。
よほど迷惑を被っているのか、彼らの声には非常に重々しい響きがあった。

「そう言うなって。カカシ先生にも何か事情があるんだろうし・・・」
「いや、あれは絶対ただの寝坊だってば」
イルカに懐くナルトはさっそく彼の周りにまとわりついている。
幸い、任務は犬の散歩という簡単なものだ。
午前と午後で依頼主の家を3軒づつ回り、ナルト達はそれぞれが担当する犬を連れて近くの公園を歩く。
広大な敷地を誇る木ノ葉公園はペットの入園を許可しており、散歩には最適な場所だった。

 

 

「私の顔に、何かついています?」
傍らを歩くイルカに対し、サクラは不思議そうに訊ねる。
先程から、妙に視線を感じていた。
しかし、サクラと目が合うとイルカはすぐに顔をそらしてしまうのだ。
「い、いや、別に・・・・」
「ナルトのそばにいなくていいんですか。あっちの方で、寂しそうにしていますけど」
「いいんだよ、ナルトとは昨日もラーメン食べに行ったし」
相変わらずな様子のイルカとナルトに、サクラはくすくすと笑い声をたてた。
「本当に、親子みたいね」

会話は非常に穏やかなものだったが、イルカは内心気が気ではなかった。
カカシに妙なことを吹き込まれたせいか、気づくとサクラの胸元に目がいってしまう。
確かに、サクラは以前よりもスタイルが良くなった気がした。
がりがりだった体は、次第に女らしく丸みをおびたものに変わってきている。
そのサクラが、自分に向かってやんわりと微笑むのだから、意識しない方がおかしい。

 

「大体、イルカ先生ってばナルトにばかりかまってずるいのよ」
「え、おいっ」
「今日は私が先生を独り占めしちゃう!」
サクラは犬の引き綱を持つのと別の手をイルカの腕に絡ませる。
肘に当たる柔らかな物は、おそらくサクラの胸のふくらみだ。
「サ、サクラ」
「ナルトが向こうで睨んでるわよー。先生を取られた気がして、面白くないのね」
サクラは面白そうに笑ったが、正確には、ナルトが睨んでいるのはサクラではなくイルカだった。
サクラが勝手にくっついているのだが、彼には二人がいちゃついているようにしか見えないらしい。

「あのな、サクラ・・・・」
「ナルトとはいつもこうやってるわよね」
うろたえるイルカが慌ててサクラの手を引き離すと、今度は彼の腕の中に飛び込んでくる。
ナルトにはないあまやかな香りに、一気に理性が吹っ飛びそうになった。
昼を告げるナルトが二人の間に割り込んでこなければ、どうなっていたかイルカにも分からない。

 

 

 

「サクラー、おはようー」
昼食後に現れたカカシは、まず頬ずりをしてからサクラをしっかりと抱きしめる。
すでに日常となっている光景に、ナルトもサスケも深入りしない。
「最近寝る暇がくらい仕事が入っていたんですけど、イルカ先生のおかげでゆっくり眠れましたよ。有難うございましたー」
「いえ・・・良かったですね」
カカシがさぼるために利用されたと知りつつも、真面目なイルカは一応返事をする。

「イルカ先生、ごめんね。カカシ先生のせいで、お仕事たまっちゃったでしょう」
「大丈夫だよ、サクラ。イルカ先生優秀だから、ぱぱっと終わらせるって」
「もー!」
「・・・・・」
カカシに尻を撫でられながら普通に話しているサクラに、イルカは無言のまま佇んでいる。
思えば、イルカが最初に目撃したとき、カカシは抱き寄せたサクラの額にキスをしていた。
もはや注意する以前の問題だったのかもしれない。

 

「あの、ナルト・・・」
「ん?」
「二人は、いつもあんな感じなのか」
恐る恐る訊ねられ、ナルトは振り返ってサクラと体を密着させているカカシを見る。
「カカシ先生、サクラちゃんがそばにいないと、全然動いてくれないんだもん。しょうがないよねー」
「・・・・」
笑いながら言うナルトに、もはや返す言葉のないイルカだった。


あとがき??
ケイ太さんのイラスト&漫画でカカシ先生とサクラがとっても自然にべたーべたーっとしていたので、こんな駄文を書いてしまいました。
ナルト達ももうカカシ先生のセクハラを黙認しているのですね・・・・。すっかり諦めているというか。
カカシ先生は純なイルカ先生がサクラに手出し出来ないと知っていて、あんなことを言ったのでしょう。悪い人。
むしろ、普通の真面目な中忍のイルカ先生をあそこまで惑わすサクラの魅力が全ての元凶か・・・。

ケイ太さんに捧げるために書いたというのに何故かイルサクにいなってしまったので、フォローのためにカカサクSSを追加。 
イチャイチャカカサクですので、カカサク好きーさん以外は読まないように!!
ケイ太さん、25万打お祝いのイラスト、本当に有難うございました。


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